Column

08/05/02

久しぶりに美術館に行ってきた。神奈川県立近代美術館のウェブにふらっと立ち寄ったら、とても懐かしい絵画が表示されていて、あっと思った。これは絶対に行かなければ。その絵は古賀春江さんが1930年に描いたもので「窓外の化粧」という。現実的に「在りそう」な風景を積み重ねていって、でも実はどう解釈しても不思議で絶対にありえない風景となっている。この絵に私がはじめて出会ったのは、たぶん小学生高学年か中学生のはじめの頃だったと思う。それ以来、とにかくその「風景」に憧れて、意味もなくただ憧れて、いつしか気が付かないうちに、「それ」が私の生きる力になっていることに気が付いた。生きる事に意味はない、と何時だったかコラムで書いたが、私たちは生きなくてはいけない。生きるためには力が必要だから、きっと私たちは意味も無く何かに憧れたり、ただ旅行に行ってみたり、それらは人それぞれだからいろいろなんだろうけど、好きなものや憧れに意味を求めてはやはりいけない。そこにあるのはやはり「信じる力」だから、私はきっと古賀さんの絵に憧れて、それを求めながらひたすらに生きている様な気がする。私にとって生きることは同時に建築を設計することでもあるから、建築に憧れることは、つまりその風景に憧れることと同じなのかもしれない、と今回絵を見ながら気が付いた。働くのは、もちろんお金を稼ぐ為だし、スタッフに給料を支払う為だったりするわけなのだが、それは結果の様な気がして、つまりお金は目的なのか?という根元的な疑問にいつもぶつかってしまうから、お金って何なのか、と考えはじめたらそれはNOとしか言えない。絵画との出会いは人生のスタートと言えたわけで、そんないい加減な生き方がきっと私にはあっている。

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